金利惠 俳句を舞う
「俳舞」
公演報告
私の俳舞
金利惠
俳句と出会ったのは、私がソウルで暮らし始めて20年ほど経った頃。ソウル日本人会のチャリティー公演に出演した最後に、みなで「ふるさと」の歌を歌ったのだ。数十年ぶりに口にする日本の唱歌。やさしい風に浸っている感じ。旋律も歌詞もあたり前に私の内にあった。
ボコクの舞踊を求めて来た私は、日本語を遠ざけていた。でも、「ふるさと」がきっかけになってソウル俳句会に誘われ、私は俳句の魅力に惹かれていった。 日本語に改めて出会ったように思った。豊かで美しい言葉。それに、俳句は声に出してみるとき、リズムが生じる。穏やかな旋律のような抑揚も。言葉をリズムに載せ旋律に重ねると心地よい。文字としての俳句が立ち上がり、ゆっくりと膨らんでいく感じだ。リズムは呼吸。生活や言葉や思考の息遣い。旋律は思い。韓国で暮らしている私自身の息づかいと心に重なる。
俳舞。静かに息を溜めてゆっくり手を上げる。チマ(スカート)の端を摘むとまっ白なポソン(足袋)の尖った鼻がのぞく。風に吹かれるように曲線を描き私の身体が揺れる。俳句が舞いを招き、舞いが応じ、次の世界を促す。俳舞がもたらしてくれた多くのことと、多くの方たちとの出会いに心から感謝を差し上げる。
金 利惠
発想・提案:李 御寧
企画・構成・振付:金利恵
俳句と舞:金利惠(Kim Ri-hae)
長鼓:金 徳洙(Kim Duk Soo)
鼓:仙波清彦(Senba Kiyohiko)
笛:福原寛(Fukuhara Kan)
正歌:姜 権洵(Kang Kwon Soon)
メッセージ 李御寧(「俳舞」発想・提案者) 黒田杏子(俳人)
●東京公演
日時:2020年1月15日(水)開演: 18時30分 開場:18時
アフタートーク 赤坂憲雄(学習院大学教授)×金利惠
会場:銕仙会能楽研修所
●名古屋公演
日時:2020年1月16日(木)開演: 18時30分 開場:18時
アフタートーク 金徳洙×金利惠
会場:今池ガスホール
照明:三浦あさ子
音響:福井としお(名古屋)
舞台監督:キーストーンズ
グラフィックデザイン:漆畑一巳
撮影:韓 東元(Han Dong Won)
制作:長井八美 青い鳥創業(東京)
李銀子 韓国伝統文化研究会・パランセ(名古屋)
制作協力:得三 (社)サムルノリ ハヌルリム
協力:名古屋今池商店街連合会 ノリパン プラネットアーツ
協賛:Gテクノ株式会社 鶴橋風月
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院 駐名古屋大韓民国総領事館
在日本大韓民国民団愛知県本部 在日本大韓民国民団三重県本部
愛知韓国商工会議所 愛知県韓国人経友会 学校法人愛知韓国学園名古屋韓国学校
藍生俳句会
主催:株式会社青い鳥創業 詩舞楽company
助成:財団法人日韓文化交流基金
ゆるやかな応援団:
赤坂憲雄 浅葉克己 李薫 板井一訓 五影隆則 伊東順子 伊豫部節子 牛嶋竹志 呉文子 小川裕司 小澤満 笠井賢一 勝目 梓 蟹瀬令子 神山洋 カマーゴ・李栄 金徳俊 金裕鴻 隈元信一 黒田杏子 黒田征太郎 小池一子 酒井正三郎 柴田容子 柴田稔 高杉暢也 田中滋幸 蔡孝 趙寿玉 張永植 張世一 都相太 時田芳文 中上紀 中村冨貴 西田浩子 蜷川真夫 橋本経男 林英哲 韓基徳 朴茂安 平井久志 福林裕之 本村鐐之輔 間宮武美 南椌椌 三宅邦彦 三島広志 森田裕 山口禮子 山田せつ子 山本忠利 若井修二
サムルノリ誕生40周年記念
金徳洙 サムルノリコンサート2018
2018年11月1日
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
主催:サムルノリ誕生40周年を祝う会
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、在日本大韓民国民団中央本部
avangarde:n: autumn garden special
Hai Mu Dan —俳句と舞と音楽とー
韓国舞踊・俳句朗読:金利惠
韓国伝統音楽:キム ドンウォン
尺八:ジェフ ケアンズ
2018年10月14日
会場:紅蘭亭pavillon(熊本市)
<Asia 문화 Festival(アジア文化フェステイバル)>
2017年9月24日
安養川グリーン公園
主催:安養市
金利恵の舞踊を中心に韓国・日本・中国の伝統楽器の演奏
<춤속에 장단있네>
チュムソゲ チャンダンインネ
(チュム:舞い・舞踊 チャンダン:長短―韓国伝統音楽の拍子・早さ・リズム・周期)
<舞の中に拍子があるよ>
日時:2017年6月10日(土曜日)午後5時開演
会場:敦化門国楽堂
チケット:全席 20000ウオン
問い合わせ:02-3210-7001
予約:1544-1555
出演:金 徳洙(チャンゴ) 金 利恵(舞)
演目:僧舞 チャンゴ散調 サルプリチュム ソロチャンゴ ホットンカラク
公演に寄せて
'チャンダン'は韓国の伝統音楽のキーワードで、拍子やリズムという意味をもっています。公演のタイトル、<チュムソゲ チャンダンインネ>は、舞いの中にチャンダンがあるよ、とでも訳せましょうか。舞踊の師が、よくおっしゃいました。「うまい舞い手はチャンダンを踏んでおどるんだ」、「チャンダンを内に溜めて舞え」。
会場はソウル秘苑の前にある伝統韓屋の国楽堂です。キム・ドクスはチャンゴ独奏。小さな舞台で、舞いひとり、チャンゴひとり。温かな舞台をつくりたい、と思います。
金利恵
日韓国交正常化50周年記念事業
金利惠韓国舞踊公演in KAWASAKI
金利惠とわんぱくな子どもたち
日韓の架け橋として活躍している韓国舞踊家金利惠が、川崎で平間わんぱく少年団と出会いました!ハナ・トウル・セッ・ネッは日本語のイチ・ニ・サン・シ。4拍子のリズムを刻みながら金利惠の指導で、子どもたちが韓国の伝統楽器小鼓(ソゴ)を持ち韓国舞踊に挑戦。
金利惠の華麗な舞踊と、元気いっぱいの子どもたちが踊り、跳ね、打ち鳴らす楽しい舞台。
2015年7月25日(土) 16時開演
会場 川崎市国際交流センターホール http://www.kian.or.jp/
(〒211-0033 川崎市中原区木月祗園町2-2)
入場料 一般:3000円 大学生・中校生:2000円 小学生以下:1500円
主催 金利惠韓国舞踊公演in KAWASAKI実行委員会
共催 平間わんぱく少年団 青い鳥創業
協賛 株式会社紀文食品
後援 駐日韓国大使館 韓国文化院 川崎市 川崎市教育委員会
公益財団法人 川崎市文化財団 公益財団法人川崎市国際交流協会
在日本大韓民国民団神奈川県地方本部
協力 和太鼓祭音 社会福祉法人青丘社 Kim Rihye CHUM-TO
前売取扱い 青い鳥創業 03-3486-7727
平間わんぱく少年団 090-9677-2205
お問い合わせ 青い鳥創業 03-3486-7727
平間わんぱく少年団
35年前に生まれ,和太鼓や民舞、わらべ唄など日本の伝統文化を伝承してきました。20年前少年団OBによる和太鼓祭音が生まれそれ以降、民衆が伝えてきた日本各地の伝統芸能による舞台公演・海外公演をしてきました。これまで海外6ヶ国に行き,毎年のように舞台公演をしてきました。最初のドイツ公演にはテレビの制作会社が同行し、2001年NHK-BSで放映されました。昨年は創立35周年を記念して韓国民話「さんねん峠」をミュージカルにして公演しました。9月にはこのミュージカルと和太鼓で韓国済州島公演を準備していますが、この取り組みの中で金利恵さんに出会い、また新しい韓国体験をすることになりました。金利恵さんは毎月韓国から教えに来てくれますが、しっかり覚えて日韓の架け橋になる公演にしたいと頑張っています。
舞踏家・宇野萬
〜メモリアルイベント〜
「萬祭」
に特別出演
◎3月25日(月)17:00開場 18:00開演
◎世田谷パブリックシアター
◎料金:3,000円
◎宇野萬の映像上映
◎出演:麿赤兒、大駱駝艦、川野眞子(ナチュラル・ダンス・テアトロ)
金利恵(韓国舞踊家)
宇野萬氏とは、2004年劇団青い鳥30周年記念公演「シンデレラ ファイナル」に特別出演した折りに出会う。
2005年に行った日韓友情年2005認定公演「韓舞 白い道成寺」では宇野氏が舞台美術を担当。
ソウルから始まり日本各地で公演を行う。
キムドクス60歳記念公演に出演します
日時 10月27日 午後7時〜 28日午後4時〜
会場 ソウル 世宗文化会館
詳しくはこちら
ソウルにいらしたらぜひ観に来てください。」
その老女のことを思うと胸が痛みます。
長い歳月の一日一日を、一瞬一瞬を、どんな思いで生きたのでしょう。
遠い空を見上げ、山を照らす西陽を見送り、東の山のあの向こうの海が陸地なら歩いてでも夫を探しに行けるのに・・・。
戦争の時代、日本統治下の韓国全羅道の山奥の村で、結婚間もない夫を九州の炭鉱に連れ去られたまま歳を重ねた老女の話。それを日本の伝統芸である能で演じる――新作能「望恨歌」。その紹介記事をぐうぜん目にしたのは20年近く前でした。能面をつけてオッコルム(韓国服の結びの紐)を手にとって座っていたシテの写真が、あれからずっと、私の心の底にひっそりと影を落としていました。
そして、20年近く経ちました。この作品を韓国舞踊で演じるとどうなるだろう。あの老女の痛みを韓国舞踊で舞ってみたい。そう思うようになったのはここ3年ほど前からでしょうか。本格的な作品作りと公演の計画を立てていた矢先、名古屋での「望恨歌」をもとにした舞台で韓舞を舞ってほしい、というお話を頂き、お引き受けしました。本格的な作品づくりへの大きな一歩となりました。
韓舞で演じる・・・、劇中の振り、謡や衣装をどのようにしたらいいだろう。能作品の中で韓国伝統衣装そのものを着けるのは制約があるので、初演とのときからそれに似せた装束を使われた、とも聞きました。
あれこれと資料を読み進めながら、いちばん考えることは 恨(ハン)についてです。劇中の最盛の場面で老女は恨の舞を舞います。この場で、橋岡久馬先生の時は<乱拍子>、観世栄夫さんの時には<序の段>を万感の想いを込めて舞われました。いわば、この作品のキーワードともいえる恨とその舞い。
ただ、日本と韓国では、<恨>のとらえ方がちがいます。日本ではこれを恨み、と解します。一方、それにあたる韓国語には、怨恨(ウオナン)という言葉が別にあるのです。韓国の生活の中で、<恨>ということばは、成し遂げられなかったことへの強い思いをさします。他者を恨むのではなく自身へ向けるなじり、悔しさ、憧れ、希いにも通じる想いです。「恨の舞」は、その時代に生を送った自身への歎きであると同時に、それを解こうとする強い思いを込めた舞ではないだろか、と考えます。
あの戦争下、朝鮮半島から強制連行された多くの若い男たちが苛酷な労働の果てに亡くなりました。そのうちの一人の男。とうぜん、彼にも親があり家族があり、残した妻があり、故郷があり・・。彼の不幸は同時に他のそれぞれの不幸でもありました。歴史のもとで苦しみ、かつ恨を抱いて生き続けた数知れないひとりひとり。
私の祖父もまたあの時代、職を求め、韓国の忠清道から家族と共に日本に渡りました。その後、ずっと日本で暮らし、再び故郷の村に帰ることなく日本の地に瞑っています。幼くして渡日した父も母も日本で成長し、その後もずっと日本の地で暮らしました。そして、日本で生まれて育った私。さまざまな生とさまざまな恨。
初演から約20年。橋岡久馬先生も観世栄夫さんも多田富雄先生も逝ってしまわれました。そして、あの戦争が終わって半世紀以上が過ぎました。李東人の妻も世を去ったことでしょう。劇中で、『忘るなよ、忘るな』と、謡いながら何度も念を押して老女は去っていきました。
忘れていません。忘れてはいけないことです。
<恨>の舞を舞いたいと思います。老女の恨に私の思いを重ねたいと思います。それは、新作能「望恨歌」から生まれるもうひとつの「望恨歌」。あるいは、それへのアプローチになるのではないか、と考えます。
小鼓と大笒の調べにのせて
韓舞 望恨歌
2012年4月27日 於:愛知県芸術劇場小ホール
原作:多田富雄 能「望恨歌」(マンハンガ)
韓舞:金利惠
小鼓:久田舜一郎
大笒(テグム):李星儁
朗読:紫堂 恵
謡:久田勘鷗
主催:NPO法人 日韓舞台芸術友の会 絆(イニョン)